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フィルム写真とデジタル写真のちがいってなんだろう。

鈴木心写真学校のオンラインサロンには「フィルム部」があります。
ほとんどが初心者ですが、中にはフィルム歴20年以上のベテランも。
今回はベテラン勢、橋本裕矢さんにフィルムで撮る意味を教えてもらいました。

前回のフィルム部のレポートはこちら。

橋本祐矢(a.k.a はしもん)と申します。ワークショップに3つ参加し、鈴木心写真学校にどっぷり浸った2023年。フィルム部には、今もフィルムで写真を撮っているというだけの理由で、ご意見番として勝手に参加させてもらっています。

写ルンですとは違うんです

なぜ今フィルム部ができたのか? それは、写真の起源に触れ、原理原則を知るためです。
原始的なカメラ=大型の4×5(シノゴ)というカメラを使い、ポジフィルムとモノクロネガフィルムで撮影します。

【ポジフィルム】
色と明るさがそのまま映し出されるフィルム。
ネガフィルムと違いそのまま鑑賞できますが、ラチチュード(明るいところから暗いところまでの光を許容できる幅)が狭く、露光量を正確に決める必要がある。

【モノクロネガフィルム】
被写体の明るさと逆転させて記録するフィルム。撮影の後さらに暗室での現像やプリントの作業を行う。

【4x5(シノゴ)】
4インチ×5インチ(約10.2 cm × 12.7 cm)という大きなフィルムを使用するカメラ。フィルムが大きいぶん解像度が高く、カメラの構造が原始的なのでカメラの仕組みをよく知ることができる。

ゴールは自分で撮影したネガフィルムから大きくプリントすること。今はポジフィルムで撮ったものを現像に出して、オンラインミーティングで確認しているのですが、みなさん悪戦苦闘しています。

前回参加したフィルム部員は、最終的に暗室を調べて、大全紙(既成品の最大サイズ 610mm × 508mm)でプリントされていました。それをみんなで持ち寄り発表会。皆さん口々にとても良い体験ができたと言ってくださいました。

オフラインレクチャー+オンラインミーティングで活動中のフィルム部。

条件が限定されるフィルムの難しさ

  • 撮影しきって、現像に出して、プリントしてからじゃないとちゃんと写っているかが分からない。

  • 感度が普通は100〜400、高くても3200くらいまでしかない。

  • フィルムを装填したら感度は変えられない。

  • 暗い部分は(真っ黒く)潰され、明るい部分は(白く)飛ぶ。

デジカメは撮影してすぐに写っているかどうか確認できます。そして感度も12800、いや機種によってはもっと上げられる!

デジカメならまあまあ目で見た状況が写っているんじゃないでしょうか? あるいはRAW現像で簡単に調整できる。それがフィルムだと全部できないから、本当に面倒です。

そして何よりお金がかかる!

シノゴだとフィルム10枚で10,000円~、現像は1枚1,000円。プリントしたら5,000円〜数万円。1枚仕上げるのに数千円〜数万円かかるんです!

しかもフィルムの装填がちゃんとできていなかったら全部パー。撮って写ってると期待していたのに。それでもやりますか? って話ですよね。

フィルムで鍛える写真力

前述の通り、フィルムはデジカメに比べてリスクがたくさんあります。だからこそ。

適正露出

自分は今何を見ていて、何を表現したいのか? どの部分を一番見やすくなるよう露出を合わせていて(=一番見せたいもの)、その周りの露出を何段までなら出るのか?を思考する。

なぜそれを撮るのか

仕上げるまでの費用と時間のコストがかかるという物理的制限から、1カット1カット、シャッターを切るのに「これ撮る必要ある?」と自問する。

プリントという表現も加わる

暗室でのプリントは、撮影した写真を最終的にどう表現したいかの集大成。自分で見た、あるいは感じたあのときの画をプリント作業で詰めていきます。

プリントのノウハウも奥深く、ここでは書ききれないので割愛しますが、ちょっと設定を変えるだけでガラリとイメージが変わります。そこに「私はこう見えています」という個性が現れます。これはRAW現像でも一緒ですね。

選択の連続

撮りたいものを決める。もっというと最終的なアウトプットをイメージをしてから、フィルムのサイズを決めて、感度を決めて、カメラを決めて、ロケーションを決めて、どのように撮るか決めて、どう現像するか決めて、撮った中から何を何枚プリントするか決めて、どうプリントで仕上げるか決める。

デジカメでも考え方は同じですが、コストも違い、よりシビアになるので、選択するということが研ぎ澄まされていきます。

発表会の様子

結局なんでフィルムやってるの?

いずれフィルムはなくなるからです。
まだ買えはするのですが、印画紙や暗室関連の機材、現像所は年々減っています。 だから「まだあるうちにやっておけ!」が私の原動力。

フィルムのほうが趣があるとかいう人もいますが、RAW現像やアプリでだいぶ近づけると私は感じています。ただ一つ言えるのは、フィルムは撮ってからプリントまでしないとあまり意味がなく、そのプリントは確かに「モノ」として手元に残るんですよね。

仕上がりの情報量・感触はフィルム・アナログならではだと思っていたのですが、額装するとデジタルもフィルムもあまり関係がなくなるのもまた事実。

フィルムや暗室を経験していたからこそ、現在のデジタルに移行して露出の考え方、写真の濃度や色味についてめちゃくちゃ役立っています。

シノゴレクチャーの様子

フィルム部の様子はオンラインサロンで!

フィルム部は鈴木心のオンラインサロン、鈴木心写真学校で活動中。フィルム写真の魅力を知りたい方はオンラインサロンを一度覗いてみませんか? もちろん入部も大歓迎です。

鈴木心のフィルムで撮った珠玉の作品たち

鈴木心撮影、フィルム写真作品のプリントです。写真家の作品としては破格なうえに額付き。ぜひ手にとって、飾って、隅々まで眺めていただきたい。

フィルム時代の作品を書籍でもご覧ください。

「写真の」奥深さにふれる、ワークショップ体験!

鈴木心写真館の出張イベントとともに、写真ワークショップも出張しています!

鈴木心の撮影は1組2〜3分で終わるさながらドライブスルーですが(!)、出張ワークショップは対面で、2時間みっちり! 写真の面白さをお話しして、撮って体感していただける機会ですので、ぜひお越しください。

本記事は、鈴木心写真学校のオンラインサロンで連載しているコラムを一部転載しています。

(編集:高橋慈郎・山田友佳里)

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