ポートレート撮影に欠かせない「手の表情」
写真の中で何を伝えられるかを考えたとき、顔だけではなく、もっと多くの物語が写り込むことがあるのではないでしょうか。視線が向けられないほどの優しさや、無意識の瞬間に表れる感情、そして関係性までも。
鈴木心写真館スタッフが最新の写真館づくりをお伝えする連載。前回はこちら。
顔がうつっていなくとも
今回のテーマは「手に宿るものとは?」
以前、私が撮影したわんちゃんの写真について、先輩の平山さんに見てもらったときのこと。セレクトで私はわんちゃんだけが写っている写真を選んでいました。でも、「この写真いいよね!」と平山さんが言ってくれた写真には、飼い主さんの手が写っていた。
実は、このわんちゃんは、重い病気を抱えていて、先があまり長くないかも知れないとお医者さんに言われ、元気なうちに写真を残してあげたいと写真館にきてくださった。
この手には、小さくてか弱いわんちゃんを、優しく支えてあげている、飼い主さんの愛情が詰まっていた。
そして実際に他の写真と比べてみると、この写真だけわんちゃんの口角が上がっていてなんだか顔が嬉しそうに感じる。そんなことが、1枚の写真から、飼い主さんとの関係性まで、読み取ることができるんです。
感情や関係をうつす「手」
これは、他でも言えて、例えばお子様だけの写真を撮るときに、ご両親の手が写っていてもいい。大好きなパパやママの手に包まれて、安心して写真を撮ることもまた、今ならでは。
この写真ではパパやママの手がなんだか大きく見えているけど、これから成長して大きくなるとそんなふうに感じなくなるときがやがてくることを思うとまた、感慨深い。
手に感情は宿る! だからこそ、顔の表情だけでなく、手の表情も大切にしたい。手だってつくられた、やらされた表情なのではなく、その人らしい自然なものをうつし出したい。
そんなことを改めて感じるのでした。
最も自然な表情も、最も自然なつながりも。
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(文・写真:谷口ひさえ、編集:山田友佳里)
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