山本舞香写真集「サニー/ムーン」の秘密。鳥取完結編
さて、今回も!山本舞香写真集「サニー/ムーン」の秘密、鳥取完結編です!沖縄編に続き、本作品への撮影者目線での背景を遠慮なく語りまくります!
そもそも「サニー/ムーン」とは?
この写真集は「対比」がテーマになっています。
・二十歳前、後の山本舞香
・幼さ、大人びた表情
・真夏の沖縄、真冬の鳥取
・そして、本を対象に時間を過ごすあなた、と静止した永遠の山本舞香。
その様はまるで太陽と月の様に昼と夜の対局であり、それぞれの美しさがある。タイトルにはきっとそんなメッセージが込められているのです。(これだけ関わって、聞いていないのですが、、、)
カメラ、レンズ、一個ずつ
大嵐に追われて早々と撮影した沖縄編に対して、鳥取は着陸できるかどうかもわからない吹雪のお迎えにもかかわらず、あいかわらずカメラ一個で現場入りする鈴木心。JRSKISKIの撮影はニュージーランドの雪山で行われているのですが、そこですんなり動くソニーミラーレスの経験値があるので、いつも通りのA7SとSEL2470だけ。重い機材はフットワークの妨げになってしまいます。
ページを超えた厚みを獲るために
沖縄で撮影したロケーションは、移動の飛行機、浜辺、ダイビング、夕景、夜のホテル、そしてプール、リゾートの開放感に対して真逆のレンジを広げるために、鳥取では極力、山本さんの馴染みの場所で撮影することで、リラックスできる場所、で色々な表情を引き出し、感情の厚みの補強を狙いました。これはロケーションだけではなく撮影アングルも前回に加え、同じ目線に終始せず、近い、遠い、高い、低い、などを掛け合わせていくことで、状況の厚みを強化します。そういう点からもバリアングルのカメラ、は有利ですよね。
ロケハンは、しない。
夜に現場入り早々、魚アレルギーにもかかわらず山本さんのおなじみのお寿司屋さんで全員会食。あ〜おいしかったなぁ。「ロケハンいきますか?」「大丈夫です」僕は基本的にロケハンにいきません。(これはおっきな広告などは別ですが)撮影は居合斬り。お互い、土俵に上がって、はっけよーぃ、のこった。これで十分。練習試合が相撲にないように、一本勝負だからこその状況がある。むしろ自分だけロケハンするってちょっとズルくないですか!?というのは冗談としても、この予定調和でないことがむしろ自分の思わぬ良い状況を作り出してきました。山本舞香がやりたい様に、任せる。これ以上に自然な表情は得られないわけですから、委ねる。これが重要です。もっと重要なこと?どんな球が帰ってきても打ち返す、技術とアイディアです。
予定がないから、予定外もない。
雪が積もる浜辺から撮影は、はじまり、大雪すぎて行ったはいいけど撮影できなかった大山、そして行きつけのラーメン屋さん、駄菓子屋さん、公園、と昔の実家、そして小学校、と山本さんの案内で馴染みの場所を巡ります。米子を案内してもらう、本当にそれだけなんです。スタッフが誰もあれこれやらなきゃと言わない、、、、。その証に、予定していた中学校の撮影ができなくて、急遽小学校にお邪魔したり、予定がないことが「予定外」をうまない秘訣です。なんてゆるいチームでしょう。まるで竹の様なしなやかさ。最強です。
良い表情は良い雰囲気から。
「みんなで沖縄に行こう!」「あなたの地元を案内してほしい!」と言われたら誰でもやる気おきますよね?良い表情の秘訣はここです。よくどうやってそんな表情を撮れるのか、と質問されるのですが、良い表情が生まれる状況をつくるだけなのです。あとはシャッターを押すだけ。(毎度すみません。)当然、山本舞香はこの状況にオーバードライブをできる力があるからこそ、そのドライブ力にチームが委ねることで良い緊張関係が生まれます。巻末の山本舞香インタビューをお読みいただければ、感じることができます。
写真を編む
さて、無事撮影を完了し、写真の選定〜デザイン作業に。撮影者が写真を選ぶことを「セレクト」といいますが、僕はこのセレクトは行いません。(ど〜しても!というときはもちろんやります)なぜなら、それは編集者の仕事だと思っているからです。撮影した「素材」をいかに「調理」するか。それは調理のプロが行うこと。どんなセレクトになったとしても、それがプロジェクトにとっては最善なのです。
今回はアートディレクターの井上嗣也さんが大胆に調理してくださったことで、撮影で流れていた時間とは全く別の物語を作ってくださいました。最初にそのレイアウトを見た時、あまりに感動して自分が撮影したものと思うことができませんでした。とはいえ、こうなるといいなぁと思っていた旨味はしっかり残っており、時系列にならべるよりもダイナミックな展開に、写真家の想像力の限界を改めて知るとともに、本物の「アート」ディレクターの仕事に心を打たれました。(余談ですが、このあと東京で撮影もしたのですが、びっくり、そこは全てカット、することによってより鋭くしあがっているのです!)
さいごに
長くなってしまいましたが、こんな経緯で出来上がった「サニー/ムーン」は間違いなく、今の山本舞香のすべてを刻印する永遠の写真集です。それは同時にいまの僕にとってできることをやりきった代表的な仕事であると断言できます。編集の鏡さんをはじめ、本当に2人に委ねられる状況を最優先に作ってくださったスタッフの方々に感謝するとともに、これを手に取ってくださった方々にも感謝したいと思います。ありがとうございました。
アートディレクターの井上さん。製作中、お会いすることはできませんでした(多分お互いあえて会わなかったのだと思います)が、写真集を通じた文通をしていた様でとても刺激的な時間でした。自分の写真なのにもかかわらず、大大大大好きな篠山紀信さんの写真集を拝見している様な気持ちになる、自分にとっても貴重な写真集になりました、素敵な驚きをありがとうございます。
強さと美しさ、そして可愛らしい眼差しとは裏腹に、まるで野生児の様な荒々しくも素直な心を持った山本舞香さん。きっと、これからより鋭さが増していき、まだ知らぬ多くの人々を魅了する姿を見ることを楽しみにしています。貴重な機会をありがとう。裏表紙には、編集の鏡さんが勝手に入れた一文が。これは「サニー」と「ムーン」を隔てた対照のすべて一つに繋ぐ、すべての山本舞香ファンを代表する言葉なのだと、時が過ぎる度に確信しています。
今回の写真集に参加するにあたって、常に脳裏にいた、藤代冥砂さん。藤代さんがかつて、モーニング娘。の写真集に綴った一文を拝借し、終わりに変えたいと思います。
「もし、この時代に山本舞香がいなかったら、僕らは何をみていたのだろう。」
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