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知らないことを知り、自分を豊かにする道具、それが写真だから

私たちの写真館や写真学校で大切にしていることの一つに「共育」があります。撮影やワークショップはお客さまから学ぶことも多く、いつも自分たちの価値観を更新させていただいています。

鈴木心の写真学校、鈴木心オンラインサロン「SKOOL」には、なんとアメリカから参加してくださっている方も。「鈴木心の写真がうまくなっちゃうワークショップ」をレポートしていただくと、日本とは異なる視点から見える気付きがたくさんありました。


知らない世界を知る、それがオンラインの醍醐味。

写うまのオンラインクラスに参加している蟬本と申します。私が写真に本当に興味を持ったのはパンデミックになってからです。現在ニューヨークに住んでいるのですが、2年前のコロナ第一波で、もろにその波を被ってしまったときでした。

ニューヨークだけでも毎日1,000人が亡くなり、街はロックダウン。ハドソン川には軍の病院船がやってきて、仕事で隅々まで知っている展示会場も野戦病院と化しました。総合病院の前には遺体収容が間に合わないため何十もの冷蔵コンテナが並べられ、救急車のサイレンも鳴り止ません。

下がらない熱、夜も眠れない息苦しさ、先の見えない不安と向き合いました。検査も治療も息をしている人は相手にすらしてもらえず、ただベッドでYouTubeを見る毎日。そんなとき、心さんのチャンネルに出会ったのです。

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YouTubeではカメラやレンズなど機材について語るチャンネルが多く、私もそんな流れで辿り着きました。機材紹介自体ほんとはしたくない、新しく出たα7Cはいらないと言いながら、2014年発売の初代α7Sを勧める心さん

第一印象は「一風変わった人だなあ」。ですがその言葉一つ一つにキレがあるのが他のユーチューバーと全然違う。その後noteで「カメラは、もう、買わない、だってソニーA7Sがあるから」を読み、同じカメラを買い求めました。それからどんどん引き込まれていき、現在に至ります。

焦点となる一点=主題を正確に捉えよ

写うまに参加させていただいて、「このままいったらうまくなっちゃうんじゃない?」と思っています。とても分かりやすくて、体の芯まで入ってくる言語化された心さんの写真の極意が詰まっていると感じました。たとえば。

・良い写真とは=撮った人の気持ち、感動、伝えたいことが伝わる写真
・レンズ・カメラの構造=目の構造、人間の目は焦点が合うのは一点だけ


これまでも構図とピントくらいはなんとなく気にしていましたが、「何を伝えたいか」「だからどの一点に集中するのか」シャッターを押すたびに強く意識するようになりました。写真は、1限目の最終提出作品です。

【1限目の課題】
中心・水平・垂直・正面を固定したま、最短焦点距離から引ける最長距離のあいだを、距離を変えて3地点から撮影し、3枚の組写真でストーリーをつくりましょう。ハッシュタグ「#写うまwsオンライン1限目」を付けて、1日3投稿 × 14日間インスタグラムに投稿してください。

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蟬本睦( @atsusemi )さんの課題作品

「さすがドイツ車、エンブレムぶっ壊れててもブランドがわかる。心さんならどこの車か言わなくてもわかるよな」そんなことを考えながらエンブレムを中心に撮影したのですが、心さんから指摘されたのは「エンブレムに対して正面をとれてない。これを正面とするなら、エンブレム跡のピンを中心の点にするといいかな。まあおもしろいけど被写体勝ち(君の腕ではない)」。

エンブレムよりもさらに小さい点を心さんは見ていた。「何を伝えたいのか」そして「一点」にとことんこだわって体現することを学び、カメラを構える前、構えたときの心構え、被写体との向き合い方が確実に変わりました。

自分の写真と向き合い、他者の写真に気付かされる

写うまでは、毎日課題があります。だから自分やその分身である自分の写真と向き合うことになる。自分が見て感動したものを伝えたいのに、それをうまく表現できないもどかしさ、そもそも伝えたいものが見つからない悔しさ。いろんなことと日々向き合えるのが良い。

一緒に参加している方々の面白い、素晴らしい写真に、と落ち込むこともあれば、感心したり、時には声を出して笑ったり。行動や考え方に影響を受けることも少なくありません。たとえば谷口さんの作品「アドレナリン」。

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谷口尚江( @hiiiisaaae )さんの写うま 課題作品

つきぬけた距離やロケーションにも驚きましたが、特に3枚目、真っ暗な街道で車が通りすぎる一瞬の車のヘッドライトを照明代わりにして撮っているんです。

決して安全とはいえない車道の脇に潜んで、車が通る瞬間を待って撮影された写真を見て以来、谷口さんの根性というか撮影にかけるエネルギーのようなものに触れて、私自身の写真に向き合うスイッチが入りました。最初は難しいと思っていた課題も、写真を撮影するために外出することを繰り返すうち、だんだん楽しくなってきました。

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写真リレーでもメッキメキに腕を上げている蟬本さん( @atsusemi )の作品

アメリカに住む日本人として見えるもの

1限目のころ、ニューヨークの気温はマイナス10度を下回り、風も強く、シャッターを押す指先も感覚がなくるくらいの寒波でした。多少鼻水も出ていたかもしれません。でも楽しすぎて、笑顔で歩き回って、突然しゃがんだり、地面に顔近づけたり、氷の上で転んだり。

イバラだらけの森の中を進んで傷だらけになるし、カチカチの氷の上にほっぺたをつけようが、わんちゃんのう◯◯を踏もうが、全く厭わなくなりました。きっと周りの人は僕を見て、普段以上にソーシャルディスタンスを取っていたと思います。

アジア人が意味もなく襲撃され、地下鉄で週末だけで8件も暴行事件があり、普通にプラットフォームに立っていた40歳のアジア系女性がタイムズスクエア(日本でいえば銀座のような駅)で線路に突き落とされて命を落とす。ニューヨークはは80年代に戻ったような状況で、正直、アジア人まるだしの僕が街中でカメラを出すのはまだまだ緊張します。

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写真リレーに投稿された蟬本睦( @atsusemi )さんの作品

それでもこんなに夢中になれるものに出会えたこと、自分がこの国であらゆる意味で生き残ることを、遠くウクライナに思いを馳せながら、どうやってバランスをとっていくか考えています。心がかき乱される毎日ですが、今日も明日も自分と向き合える何かとても大切なものに出会えた、そんな気持ちです。サロン・ワークショップに参加してよかったです。心さん、山田さん、クラスメイトの皆さん、ありがとうございます。

こちらこそありがとうございます。
ニューヨークと日本の時差は14時間。写うまオンラインクラスを開催している水曜の20時は、蟬本さんにとって火曜の6時です。Zoom上で交わる「こんばんは」と「おはようございます」にギャップを覚える一方で、写真を通して私たちはいま気持ちを重ねているんだと、底知れぬ心強さも感じます。

そんな仲間と時間と目的を共にできることは、このうえなく豊かな体験ですよね。

世界中から参加できる、オンラインワークショップ!

今期はオンライン開催がメインで、現地にお越しになりたい方はオフラインで参加できるスタイル。全国の仲間と一緒に取り組むことが何倍もの学びになる、なんて尊いワークショップ!

でもやっぱり、現場だからこそ受け取れること、感じることもあるから。当日お越しになれる方は、オフライン受講も大歓迎です!

まずはオンラインサロンから入門もよし。ちなみにサロンとワークショップに初参加の方は、ワークショップ参加期間中のサロン入場が無料で試せる特典つき!

学割もあります。学生のみなさん、いろんな社会の先輩に学べる絶好の機会ですよ!

(編集・山田友佳里)


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