フイルム写真よ、さようなら。#2「写真はスポーツだ!」の巻
カメラ、レンズ、沢山の選択肢からの必然性を知るためには、あえて違和感に飛び込むことが有効です。みんながやっているから?うーん、それはないかなぁ。ということで、今挑戦している「みんな」とは「真逆の選択」をご紹介してみたいと思います。これは写真の筋トレのようなものです。
早速ルールを策定です。
1、広角単焦点|癖のある機材を選ぶ
慣れてくると選びがちな標準レンズ50mm。視覚に近い範囲が写り、パースも出にくいので画面の作りやすさは抜群です。さらにマクロも守備範囲になれば、一本でなんでもできる!ので、使わない!まずは1段階広角の35mm。このSEL35F28Zはとにかく小さくて軽い。初代A7シリーズとの設計思想を共有したレンズです。
2、絞る|ボケに甘んじない
高感度フィルムが手に入らないので手持ちだとどうしても絞りは開けがちです。デジタルでもオート撮影だと、ブレないように優先的に絞りを自動で開けてしまう。結果SNSをみると意図もなく絞りが開放気味の写真に溢れています。
絞りを開けた写真に慣れてしまうと
1、画面内の構成力がいらない
2、内包する情報量が減る
3、よって長期鑑賞に耐えられない
4、既視感にあふれ、すぐに飽きる
厳しい見方をするとボケというのはごまかしにはもってこい、なわけです。考えなくても撮れる写真になってしまうわけですね。うーん、これは筋トレが足りないですねぇ〜。誰でもできる。実際、機械でもできる設定です。
ですので、絞りはf11(常用f13−16)以上。暗い?いや、暗くない!感度40万までつかえるA7Sには「暗い」だなんて言い訳にすぎません。もうおわかりですね?なぜ、ソニーA7Sなのか。これ以上小さくて、軽くて、明るい、そしてサイレント撮影ができるカメラは人類史上存在しないのです。
3、量を撮る|新しい機材に慣れる
写真は慣れです。新しい機材を導入したなら、とにかく使い倒して、自分の意識との誤差を埋めていきます。レンズの歪みが安っぽかろうが、フォーカスが遅かろうが機材の癖がある。それを掴んでしまえば、あなたの体の一部になるのです。自分に手繰り寄せるのではなく、自分が機材に寄り添ってあげるのです。筋トレっぽいですね〜。
4、ブレは気にしない|質より量
絞り、感度、シャッタースピード、構図、ぜーんぶ気にしていたら、人間じゃなくて、監視カメラ?三脚?になってしまうので、僕らが撮る意味がありません。大丈夫。A7Sは感度が高いのでほとんどブレません。とにかくどんどん試してみる。一旦シャッタースピードを諦めて、画面構成を優先します。撮影はマニュアルモードを使います。
5、水平垂直を忘れる|構図のバリエーションを増やす
頭を傾けても僕らの視覚は風景を水平垂直に見ています。だから水平垂直を!とワークショップの中心で散々叫んできたのですが、35mmだと話はちょっと別です。歪みが強いので構図がまとまり辛い。自分の常用構図を破壊するために大胆に傾き取り入れていきます。状況と構図の整理がつくようになるまで。
6、ここで、ちょっと振り返ります
なんとなーく、写真の筋トレ、の意味がわかっていただけたでしょうか?常用手段に甘んじることなく、慣れない機材と向き合って、色々な写真のアプローチに順応するアイディアと技術の開発。メリットは少ない機材で様々な状況に対応できること。つまり、機材を減らせるということです。
被写体はなんでもいい、なんでもない日常をいい感じに撮れる様になれば、とっておきの被写体はとんでもなくよく撮れるようになってしまいます。これぞ筋トレ。あれですね、ドラゴンボールで言うと、あの部屋のことですね。
しっかし、むずい。35mmで、物、料理撮影っていままでやったことなかったのですが、ボケがないと容赦無く雰囲気がなくなってしまうので、克明に写りすぎて、そしてレンズの歪みで変形してしまって、なっかなか美味しそうに見えない、、、。
ちょっと奥行きだしたりとか、
真俯瞰にしてみたりとか、
寄ってみたりとか、、、、(最短撮影距離遠おおおおおおおい!)
あまりに難しくて、黄昏てしまいました。(ランチ!:TSUMUGU)
さてさて、ここからは応用編、いってみましょう。僕は基本的に撮影したまんまを現像しています、後処理でよくなるのって後ろめたくって。居合斬りですから。撮影は。しかし、常用手段なので、あえて、処理してみます。デジタルなのに、フィルムみたいに見える様に!
7、現像前のお手入れ:ノイズを加える|劣化される
ここからは撮影後とソフトウェアでのお話です。(ここの具体的な使い方は後日追ってできればと思います。)フィルムのあの独特な雰囲気はレンズやフィルムの解像度の低さにありますが、これはインスタ同様いくらでも後処理でつけることができます。
みなさんがお使いの現像ソフトにもノイズを調整する項目があるかと思います。恐れずにどかーんと数値をあげて見てください。粗くなりますねぇ。今回掲載の画像は四角形状のノイズをインパクトが80、粒子感が50という数字になっています。これは一括で調整するのでものの数秒で済みます。
8、現像前のお手入れ:カラーバランス|色温度の破綻
優しいデジタルカメラにはオートホワイトバランスだなんて機能がありますが、フィルム時代にはそんなものはありません。いつでも太陽モード。なので撮影はAWBではなく、太陽にして撮影してください。それでもふつーに写ってしまう場合は現像ソフトのホワイトバランスの項目を傾けます。
これは撮影場所の光環境の影響次第でそれぞれの設定が必要ですが、ざっくり言うと色温度は基本的に青方面か黄色方面なのに対して、色合いは緑とピンク方面。これを組み合わせて全体の色味を傾けます。コダックだと黄色方面、フジだと青方面、みたいな開発された国の人の眼の特性によって色作りにも傾向があるだなんて言われていました。
さてさて、だいぶ長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?僕が写真をはじめたのは2001年のことですが、いままでずうっとこんな筋トレの繰り返しの毎日でした。だからこそ、まだみなさんの前で写真をプレーすることができているのかもしれません。いつもの味付けに飽きてしまったら?あえて違う環境を楽しんでみてください。写真はコミュニケーション。相手の声に耳を傾けること、相手の言語で話すことは自分自身の拡張に繋がります。機材を作ったのも人、つまり機材との対話はその開発者との対話なのです。
同時にいつもの写真の良さも新しい面から気づくことができるはずです。駆け足になってしまいましたが、ほら?フィルムとお別れできそうでしょ?あくまで僕の筋トレメニューなので、参考までにしていただければと思います。是非みなさんからのご感想、ご要望もお待ちしております!ではまた次回!ってあるのかな。(文章、写真:鈴木心)
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