写真を、五感を研ぎ澄ます、時間のこと。
遺伝子を意識したことはありますか?
波の音
焚き火の炎
星空
そして山々の緑
そんな風景を前にしたときに、人はなぜ心が安らぐんだろう。なーんてことを考えながら、そういう時間こそ、副交感神経が働き、僕たちはふと、一息をつくんじゃないかと。
いずれの共通点も、僕たち人間はずっと付き合ってきた、風景だった。この数十年ばっかり、利便性の代償にそれらを失い、登山や、キャンプと題して、時間の流れに逆行する行為をおこなっている。失った何かを取り戻すために。
コロナになってすぐ、知り合いに勧められてキャンプを始めようとした。撮影のロケでいかに機材や道具を少なくするか、そういったことには長けているし、道具の選別にも厳しくできる。車もなおさら。むしろ野営する撮影は、キャンプそのものだった。雪山だろうが、海外だろうが。
数度キャンプをしてみて思ったのが、車で行って、その場で展開し、やることといえば、食事。なんだこりゃ、と。撮影の方がよっぽど過酷だし、野生で、格好ばかりのキャンプじゃないか。一瞬で熱が冷め、こだわりにこだわった道具のほとんどはメルカリした。
都会型のBBQは手ぶらでいける。すべて用意されているが、炭起こしから自分でやらなければいけなくって、あ、この展開キャンプにそっくりだ、と振り返る。火を起こしてみると、食べ物を焼くよりも、火を見つめている方がよっぽど楽しかった。
ああ、焚き火がしたいんだ。
キャンプじゃなかった。海水浴じゃなくて、波がながめたいんだ。イルミネーションじゃなくって、宇宙を感じたいんだ。と、ふと気づいた。世間ではそれを「つかれた人」と呼ぶかもしれない。それよりも、もう一回自分の遺伝子に刻まれている、本来体感するべき空間を体験したい、そんな欲求が、自分を動かしていたのだろう。
ということで、善は急げ。ソリッドなキャンプギアに詳しい知り合いに問い、とりあえずおすすめはすべて購入。早速昨日、ワークショップおわりで、某所で焚き火をこじんまりしてみた。ついつい、炎に見惚れて家に帰ったのは深夜1時を過ぎていた。
でも、十分すぎるくらい、心は安らぎ、安心した。オンラインサロンでにぎわっている美容ちゃんねるでも語られていた、バランスの話。運動、睡眠、食事。酸性とアルカリ性、陰陽。そして交感、副交感神経。それらの歪みを意識しつつ、傾いた時には、補正する。それは写真の撮影やコミュニケーションにそっくりだ、と自分と対話をする日々なのでした。
本記事は、鈴木心写真学校のオンラインサロンで鈴木心が書きおろしているコラムを一部転載しています。オンラインサロンにご加入いただくとすべての投稿を最新・最速でご覧いただけます。
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(編集・山田友佳里)