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鈴木心の写真道場#10「撮影した写真、どう調理する? すべて見せます! レタッチ鑑賞会...ではなく道場だった!?」の巻
写真道場に、新たなシリーズ誕生
3月16日、何やらみなさんが真剣な面持ち。この日鈴木心写真館で行われたワークショップは、鈴木心の画像処理を生でお見せする、名付けて「レタッチ鑑賞会」のはずが、、、
このアクション、あなたはもう体験した? みなさん、お馴染みの「しゃし〜ん! どぉじょ〜う!」(注:写真道場)のコールでようやく緊張感漂う会場に笑顔が。写真館でのイベントはこうでなくちゃ!
そういうわけで、レタッチもライブだ!
鈴木心とアシスタント卒業生の高木亜麗による、お客様からあらかじめ募集していたRAWデータの仕上げバトル! なんとふたりの作業を2画面、リアルタイムで鑑賞できる、この1P、2Pのゲーム感。RAWデータをご提出いただいたお客様がクライアントとなり、仕上がりのイメージを伝えていただいたところで、試合開始です。
(オリジナルデータ)
(仕上げ:鈴木心)
(仕上げ:高木亜麗)
この写真の撮影者(クライアント)からの要望は、「雑誌の京都特集、見開きの扉ページに使用する写真」でした。
まず基本。両選手ともに写真の傾きを補正し、画面の中の縦横の線を水平垂直に。(微妙な差異ですが、鈴木選手の方が正確か?)高木選手は、店外をフラットにかつ沈ませることで、逆に店内の奥行きを感じさせる仕上げに。一方の鈴木選手、店外の風景を明るく補正し、店内から漏れる光を強調、右手看板の文字や花壇などにも目がいく情報量の多い写真は、灯りのついた店内一部だけでなく、お店をとりまく空気感を伝える1枚に。鈴木選手の勝利でした!
(オリジナルデータ)
(仕上げ:鈴木心)
(仕上げ:高木亜麗 )
真俯瞰でやや平面的なオリジナルデータ、に大きく彩度とコントラストを調整した鈴木選手、上下2枚を見比べるとわかりますが、光の表現ゆえ生クリームの色がだいぶ黄色に寄っています。そして明るさでトップが若干飛んでしまったか、、、。一方で、控えめにディテールを重視した高木選手、神々しいながらも上品なパフェに立体感を出し、見事な勝利を収めました!
(左:鈴木心、右:高木亜麗)
(左:鈴木心、右:高木亜麗)
こうして並べてみると、仕上げの段階で写真の見え方が大きく変わること、そして同時にその仕上げ方の個性も、歴然としています。鈴木選手のほうが、見るひとの視線と心にダイナミックに訴えかける一方、高木選手は劇的であることを避け、落ち着きと余白がある印象です。
〜お客様の感想より〜
「クライアントの要望に応えるために、どのような方向性で現像していくのか、お二人の違いがはっきりと出ていて非常に興味深かったです。」
「途中から自分だったらどうやってレタッチするだろう、、、という妄想参加型のイベントになっていました。心さんと高木さんのレタッチには根本的に持っている感覚の違いがあるように見えて面白かったです。答えが無いからこそ、ゴールポイントをクライアントから聞き出す重要性や使用用途から導き出す脳みその使い方は、知っているようで知らないものでした。」
「短時間のなかでのお二人の判断力と技術に見入ってしまい写真を撮るのも忘れてしまうほどでした。今回、自分の写真を心さんと高木さんに画像処理していたただくという贅沢な機会に感激しつつも、お二人とも違った仕上がりでどちらかを選ぶのはとても迷いました。」
フィーリングの引き出し
写真道場というバトルにはもちろん「制限時間」が存在しますが、そうでなくとも「処理速度にはポリシーを持っている」という鈴木心。パソコン上ですべてができるようになっている今、写真仕上げのあらゆる要素は、どこまでも細かく設定できてしまうから「自分でやる写真の仕上げは、どこで終わらせればいいのか分からない」というひとも多いはず。
それでも、誰かにその写真を見せる前には、どこかで終わらせなければいけません。その判断をする自分のフィーリングは、「観てきた写真と、作ってきた写真が引き出しになる。」と鈴木は言います。
普段何気なく見ているたくさんの写真たち。それは、誰かが仕上げたものです。どうして? 一体、どんな意図で? それを見たとき、自分の視線はどう動く? どんなことを、読み取った? そんなふうに自分が写真を見るときに意識することは、自分が写真を作るときに、きっとひとつ、決め手のヒントになると思うのです。
アシスタントとして、過去、長年鈴木の仕事撮影でも仕上げに関わってきたという高木でも、もちろん、ここまで写真に違いが出るのだから。正解はなく、見るひとの目をどう想像するかによって、写真は、撮ったあとにもまだまだ、豊かな選択肢が広がっているということ。それを教えてくれた、ふたりの大健闘なのでした。
とにかく笑いと波乱の大乱闘! が恒例の写真道場ですが、この日は「緊張感のある空気が新鮮だった」という感想もあったほど、みなさんの真剣な眼差しと、バトル終了後の会場に起こった積極的な質問や発言も、とても印象に残り、新しい白熱の仕方を体験しました。
そこで! 5月9日(木)夜! 都内某所にて、次なるレタッチ道場が開催されるとか、、、、、!? 次に、鈴木心のレタッチを体験するのは、あなたのRAWデータかもしれません。(記事:湯本愛 写真:齋藤さおり)