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鈴木心写真館、松陰神社前の小さな旅。#1 「PRÈS DE SHOIN(プレ ド ショウイン)」

「松陰神社前には、長く住んでいて。昔ながらの商店街に、自分ひとりだけ新しいタイプが入っていったら面白いかなと思っていたんですが、いつのまにか自分より先にいろんな人たちがやってきていた」

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そう話すのは、「PRÈS DE SHOIN(プレ ド ショウイン)」を営む大杉さん。松陰神社前商店街を一本入った路地にある、リヨン料理屋の店主である。ねじり鉢巻に関西弁という一見フレンチシェフとは思えぬ雰囲気ながら、フランス・リヨンを愛する思いは強い。

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食肉加工品やそれを売るお店のことを、リヨンでは「シャルキュトリー」と呼ぶそう。ショーケースに肉や野菜の惣菜が並び、それらを盛り合わせでいただける。調理学校へ通っていた学生時代、現地を訪れた大杉さんはそんな店に魅了されたのだという。

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「リヨンは、ボジョレーの街。だから、この店にもワインはボジョレーしか置いていません」と言う通り、店内には多くのボジョレーのエチケットが貼られている。

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「後づけでいえば、リヨンと松陰神社には少し似たところもあるかな」とおどける。トレードマークのねじり鉢巻も「以前恵比寿で働いていたお店の厨房が暑くて汗がすごくて、お客さんにすすめられてやり始めたらやめられなくなった」と、笑って話す大杉さん。この人柄も、お店のスパイスである。

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ビーツ、レンズ豆、フロマージュブランのサラダに、キャロットラペ。カラフルな色合いが食欲をそそり、ワインが進みそうな前菜の盛り合わせ。すべてが滋味深く、ほっとする味わい。

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ローストポークのサンドイッチ。ロゼ色が美しい肉は、噛めば噛むほどにその味わいが広がる。他に、豚肉のリエットのサンドイッチも。パンを包む飾らないそのラッピングペーパーも、どこか現地を思わせる。

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カラメルを割る音までもがおいしいクレームブリュレと、どこまでも真っ白なほの甘いフロマージュブラン。苦味の強いコーヒーが、甘いデザートによく似合う。

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「都心ど真ん中とは違い、何もしなければ、人は集まってこない。そんな土地柄なのかもしれないが、ここはなんらかのメッセージを発信しようという人が多い街だと思う」

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「このあたりは個人店が多いから、やはり仲良くなることは多い。いいやつばかり。外部からは、“皆んなで盛り上がっている、熱量が高い街と思われていると思うが、お互いが馴れ合っているというのではなく、それぞれに個性がある」

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その個性を活かしたスタンドプレーが、副次的にエリア全体を盛り上げることになる。そう理解した上で動く者たちの集まりが、この松陰神社前のムーブメントを作っている。

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「変わりゆく商店街を住人として見ていたので、なんとなく軽薄に見えていたところもあった。でも、彼らは遅れて店を出した僕のことも快く受け入れてくれて。人の繋がりで盛り上がりを生もうとしている人たちによくある疎外感はなく、彼らが先輩としてくれる仲間になれてよかった」

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そんな店主が抱く思いも、この店の料理の味わいを深くしているのかもしれない。(記事:末松早貴 写真:鈴木心)

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PRÈS DE SHOIN(プレ ド ショウイン)
東京都世田谷区若林4-20-10 テラコート1F(Google Map
カフェ:12:00〜17:00/ディネ18:00〜24:00
http://presdeshoin.com/


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